Tax Fantasista

シアトルの情報やそんなに役に立たないアメリカの税務・会計についてちょこっとLOVE

進出先にシリコンバレーを選ぶ時に少しだけ考えて欲しいこと

先日、安倍首相がシリコンバレーに来て5年間で日本のベンチャー企業200社をシリコンバレーに送るプロジェクトを発表したし、日経でもシリコンバレー特集が組まれたりとかで、「シリコンバレー」というワードが日本でもだいぶ広まってきてますね。

 

本当にシリコンバレーに日本企業が進出しまくってます。問い合わせがめちゃめちゃ多いです。そして政府やメディアのおかげでこれからももっともっと増えると思います。今更感は否めませんが、このような動きは日本にとっては良いことですね。

 

しかし、バズワード化したものって本質を見失いがちですよね。朝バナナダイエットをテレビでやったら次の日にスーパーのバナナが売り切れる。でも後々、実は効果がなかった的なね。うーん、たぶんそれとは、違うけどね。

 

本質といった意味でシリコンバレーといえば、以下の点が挙げられます。あさはかですが。。。

  1. 優秀な人材が集まる
  2. 著名な投資家がいたり、お金が集まる
  3. 情報が早い
  4. 凄いネットワークがある

起業家やスタートアップであれば、投資家や優秀な人材がいるだとか、そこから派生する質の高いネットワークや生の情報とかの起業環境が整っているという理由でシリコンバレーに行くというのはもっともです。

ただ、資金調達やExitが主な目的でシリコンバレーに法人を作っている日本企業も聞いたことがないし(僕が知らないだけかもですが)、そもそも外国企業が100%持ってる法人に投資するVCなんているんですかね?(僕が知らないだけかもですが)

僕の知る限りでは、最初っから優秀なエンジニアを雇えるような知名度や体力のある日本企業っていうのは、シリコンバレーを拠点に世界展開を考えている日本を代表するソフトウェアやゲーム会社がばかりな気がします。

ネットワークを作るという面でもやはり英語力というところでいうほど利用できてない会社がほとんどです。

そこを考えると日本企業の100%出資の現地法人の場合って、必ずしもシリコンバレーじゃないとダメだっていう会社って全部じゃないと思うんですよね。もちろん、現地法人の役割なども様々なので一概には言えませんが、10社に1社ぐらいは、なんとなくシリコンバレーに法人作りました、または作ろうと思います、という日本企業があるんではないかと僕は思います。

誤解しないでほしいのは、今のこの流れ、シリコンバレーをはじめ海外に日本企業が進出しようとしていることは、日本が変わるためには絶対に必要なことですし、むしろ良い兆候です。

 

ものすごーく前置きが長くなってしまいましたが、何が言いたいかというと、本質を見ずにシリコンバレーに拠点を作ってしまうと、コストだけがかかるんです。

 

最近ではメディアでも多く取り上げられているので、サンフランシスコ・シリコンバレーの家賃がありえないぐらい高いことは世界的に有名です。

当然、出向社員の住宅手当も個人所得扱いとなるため、駐在員の所得が割高になります。駐在員の所得が高くなるとどうなるか?

 

個人の所得税が高くなります。

 

じゃあその駐在員個人の所得税は誰が負担するのか?

 

多くの場合は、会社です。

 

さらに日本では馴染みのない州個人所得税というものもありますので、それも会社が負担します。

 

(アメリカでは、連邦税とは別に、州や市などの地方自治体が独自の課税方式で税金を徴収し、州の財源となります。各州税用のフォームを各納税者が提出し、納税します。)

 

そのまたさらに、州個人所得税も会社が負担することになると、その補助も所得扱いとなり総所得が膨らみ、そしてさらに税金が。。。。

 

という風に雪だるま式に総所得が膨らんでいき、従業員の手取額が6万ドル(720万円)であっても家賃補助などを乗っけていくと額面では15万ドル(1,800万円)を超えることもざらにあります。それが役員クラスになると、、、考えただけでもぞっとする数字になります。

 

とりあえず家賃は高いけど、必要経費だから。。。。と家賃以外でボディーブローのように効いてくる個人の税金のことまではさすがに予算組んでないです。

 

じゃあシリコンバレー以外の進出先としてどこがあるのか?

 

西海岸でいうと、同じカリフォルニア州のLos Angelesをぱっと思い浮かべると思いますが、僕がお勧めしたいのは、ワシントン州のシアトルです。

 

お勧めする大きな理由のひとつがワシントン州の税制にあります。

 

まず州の個人所得税がかかりません。

 

カリフォルニア州の個人所得税率は累進課税となっているので、個人の所得によって税率が変わるため管理職など高給取りではない駐在員の給与額だとだいたい総所得の5-7%ぐらいだと思っていてください。

シアトルに進出して駐在員をそこに送り込むとその州税が0になります。

 

ワシントン州は州所得税がないだけでなく、家賃を比べてもシアトルはシリコンバレーの約半分です。(シアトルの人は家賃が高くなって困ってると言ってるけど、シリコンバレーの比ではない)

家賃が安いということは、その分駐在員の所得を抑えれるため、結果として会社が負担する駐在員の所得税が下がることになります。

 

シアトルを勧める理由は個人所得税がないだけではなく、法人税の点でも有利になることが多いです。

 

法人税も個人所得税と同じで、連邦税と州税をそれぞれ納める必要がありますが、カリフォルニア州をはじめ、多くの州では、連邦税と同じように会計上の利益に税務調整を加えた課税所得に税率をかけて納税額を算出します。カリフォルニア州の税率は一律で8.84%です。しかし、ワシントン州においては、法人の総収入に対して、業種ごとに決まっている税率をかけ合わせて算出するBusiness and Occupation Taxと呼ばれる法人税があります。主な業種の税率は以下の通りで、総収入に対して下記の税率がかかります。

 

小売業・・・・・・・0.471%

卸売業・・・・・・・0.484%

製造業・・・・・・・0.484%

サービス業・・・ ・・1.500%

 

営業利益率にもよりますが、適当に試算してみたら、ほとんどの場合でカリフォルニア州に比べてワシントン州の方が法人税を抑えることができます。

 

ここまで読んでくれたみなさん、周りにこれからシリコンバレーに進出しようとしている企業の関係者がいたらシェアをお願いします。

 

シリコンバレーからシアトルに引っ越してきて思うこと

 

税制面だけでワシントン州を勧めているのではなく、ここ5年でシアトルはよりサンフランシスコに近づくと思います。本当にそれを肌で感じています。特にシアトルと対岸のベルビューはコンドミニアムとオフィススペースの建設ラッシュや高速道路・公共交通機関などのインフラ整備も急ピッチで進んでます。ほんとに数年前のサンフランシスコみたい。

アメリカ人のグーグルのエンジニアに聞いたけど、マウンテンビューのグーグル本社にいるのとシアトルのオフィスにいるのって給与にインフレ調整とかあまりないらしいです。だから家賃の安いシアトルにいる方が手取りが、家賃の差額分多くなるだとか。そうゆうのもあって今シアトルに人がいっぱい入ってきて今のうちにコンドとか家を買ってるらしい。

シリコンバレーから引っ越してきた僕が感じるのは、ボーイング、マイクロソフト、アマゾンといった大企業があり、若い優秀なエンジニアもたくさんいるはずなのに、みんな全くイソイソしてない。それとは対照的にサンフランシスコの人たちはみんなギラギラしてる。街の空気感もそう。シアトルは、決して田舎ではないけど、ほどよく都会で、まさに日本の福岡といった印象。サンフランシスコのギラギラした空気感はやっぱり特別な物だったんだなーと実感しました。

 

個人としての成長をするために行くならサンフランシスコを絶対にお勧めしますが、会社としてアメリカでのビジネスを目的としてくるのであれば、無理にサンフランシスコではなくシアトルの方が色んな面でいいのかなーと思います。いったん拠点を設けてしまうと、その重い腰をあげることができなくなってしまうので、アメリカ進出を考えている企業は、どこに進出するかを慎重に考えてください。

 

 

要するに、寂しいからみんなシアトルに来てくれ!!