Tax Fantasista

シアトルの情報やそんなに役に立たないアメリカの税務・会計についてちょこっとLOVE

Uberから4,000ドルもぎ取ったサンフランシスコの女性がすごい

世界中でUberに関する訴訟問題はいっぱいありますけど、今回のサンフランシスコ在住のBerwickさんが起こした訴訟の判決が話題を呼んでいます。

まず、Uberの運転手はIndependent ContractorではなくてEmployeeだというのが原告の主張です。日本語でいうと請負業者か従業員かってところですかね。

知らない人のために、Uberの運転手は暇な時間に自分の車にタクシーのように人を乗っけてお金を稼ぐシステムになっています。もちろん、ガス代、メンテナンス費用は自腹です。

Uber側はドライバーは請負業者とみなしているのに対して、この女性は、「いや、私達は従業員だから、最低賃金を保障すべきだし、かかった費用はUberがふたんすべきよ。」と言っているのです。

この記事読んで僕が最初に思ったのは、

「えっ、こいつ何言ってんの?面接の時、契約書ちゃんと読んだの?」

だってそう思いません?時給800円で合意して初日終わったら1200円にすべきよ!訴える!ってむちゃくちゃ言ってるようなもんでしょ。そこで嫌だったら辞めて終わるのが日本なんですが、そこはさすが、訴訟大国アメリカ。噛み付いてきます。

そもそも、Independent Contractor(以下、IC)とEmployee(以下、EE)は何がそんなに違うのか?

っていうのを、会計士らしく書こうと思ったんですが、ソースの記事を読み進めていくうちにそれどころじゃなくなってしまいました。

 

でも、せっかくなのでちょっとだけ書きます。

 

雇用主側からするとICを雇用した方が、最低賃金もないし、福利厚生もいらない、給与税なども払わなくて良いのでコスト面ですごく楽です。簡単にいえば、庭の植木の手入れをするのに、おっちゃん雇ってやってもらうようなものです。

じゃー雇用主側は、全員ICにしたらいいじゃないかーと考えると思うのですが、そうは行かないのです。

全員ICにすると困るのは、最低賃金や福利厚生がない被雇用者だけではなくて、給与税を取れないIRSも同じです。

厳密に言えば、Self-Employment TaxといってICも自分達である程度の給与税のようなものは、Tax Returnの時に納めないといけないのですが、年に一度というのと、アメリカは自己申告制で、税金をちょろまかされる可能性があるので、毎回の給与の度に、雇用主が源泉徴収する従業員の方がIRSにとっては収入が安定するのです。

なのでIRSは、できるだけこいつ従業員でしょ!!って方向にもっていこーとします。

さて、その判断基準ですが、複雑というか曖昧というか、一言でいうと、雇用主がどれだけ被雇用者をコントロールしているかという点です。

例えば

  • 業務上必要な道具などを会社が支給してくれているか、自分達で用意するのか
  • 業務のスケジュールを雇用主では、なく被雇用者が決めれるか
  • 業務内容が一時的なプロジェクトのものか、または、永久的なものか

などなど。。。こんなことを考慮に入れつつ、雇用主と被雇用者の関係を見て判断するというもの。

さっきの庭の植木の例でいくと、オフィスの屋上に庭園があるとします。そこの手入れをするのに庭師を雇って、週に3回決まった時間に来なければいけないといった場合は、従業員とみなされる可能性が高いと思います。

さてさて、今回のケースで問題となっているのがアプリです。

Uber側は、ただ単にドライバーと乗客を繋ぐためのプラットフォームを提供しているだけで、勤務時間やノルマなどの設定もないし、車だって自分達のものを使ってるでしょ。とこれだけ聞いたら、確かにドライバーはICであるべきだと思います。

しかし、裁判所の見解では、Uber、またはこのアプリドライバーをコントロールしているというものでした。

全文読んでないですが、その理由として

  • ドライバーと乗客の"Administrative Support"をしている
  • 180日間inactiveの場合は、アプリが一方的に失効する
  • Ratingが4.6を下回ってもアプリへのアクセスを中断される
  • Uberはドライバーが相応のデバイスを持っていない場合は、それを提供する
  • 犯罪歴や口座情報、車の情報などを提出しなければならない
  • 価格設定はUberが行っていてドライバーと乗客で交渉が出来ない
  • 乗客に直前でキャンセルされてもキャンセルフィーは必ずしももらえるわけではない
  • Uberの無形資産(iphone app)の提供がないと業務ができない

上記の理由により、ある一定のコントロールがあるとみなされ、ICであるとは言い難いので、Berwickさんにある一定期間のガス代や車のメンテナンス費用、合計$4,152を払いなさいという判決がでました。

どうゆうわけか、この判例は、Berwickさん以外には適用できないとはなっていますが、もちろんUberはこれを不服とし、上訴することを決めています。

この他にも、5州で同じようにドライバーの定義を巡って争っているためこれで認めちゃうとやばいっていうのもあるんでしょうね。でもこれで間違いなくUberは劣勢になったんじゃないかなー。

この判決みて、おれも訴えたらいける!って思う人たちも絶対に出てくるし。

あとドライバーも集団訴訟で弁護士にそそのかされてやってるっていうのもあるんでしょうけど。だってUberでドライバーしてる人って空いてる時間にお金稼ぎたいからこれはいいの出てきたわ!!と思ってやってるんでしょ。これで訴えるとか意味わかりませーん。

もしUber負けたら料金高くなるかもねー。

そしてそして、このBerwickさんの経歴がすごい。

1980年にBerwick Enterpriseっていうテレフォンセックスの会社を設立して今はトレーディングをやってるらしい。Uberのドライバーを始めたのは2014年の夏でパソコンの前で仕事してるのに飽き飽きしてきたのでやってみたところ、3ヶ月間週に60~80時間働いてグロスで$11,000ぐらい稼いでたそうです。しかし、メンテナンス費用や、税金を引くと最低賃金以下じゃないかー!ってことに気づいたらしく、そうだ訴えよっ!ってなったらしいっす。

Berwickさんがすごいのはこれだけではないのです。

実は彼女"litigious"と英語でいうらしいのですが、すぐ訴訟するらしいです。

1991年以降、彼女と彼女の会社は20以上の訴訟をカリフォルニアで起こしたそうです。

どれくらいすぐ訴訟するかって?

 

以前、ピザ屋の店員が玄関先にメニューを置いていったことに腹を立てて$500払えと訴訟を起こしたそうです。

もちろん負けましたけど。。。

 

このブログが見つかったら、僕も訴えられるかもしれません。 

 <ネタ元>

http://www.nytimes.com/2015/06/18/business/uber-contests-california-labor-ruling-that-says-drivers-should-be-employees.html?_r=0